前回の続きです。

その1を読む。




ちょうど仕事帰りだったマサオさん。

急いで帰ってきてもらい、トマコは全部話した。


私はダメな母親だ。

このままだと虐待してしまう。

なぁ太をダメにしてしまう。

現に今。

トマコが叱り続けることで、なぁ太は失敗を恐れるようになってきた。

失敗すると怒られるから、自分で挑戦することを極端に恐れるようになってきた。

どうしたらいいのか、もう分からない。

私は母親失格だ…。


涙を流しながら静かに語るトマコ。

これまでも日々、マサオさんに

「今日は怒りすぎてしまった」

という相談はしていたものの。

こんなにも酷いことをしていたということを誰にも知られたくなかった。

というより誰よりも。

マサオさんには知られたくなかった。

でも。

この状況を変える為に。

一番話さなくてはいけないのは、トマコの実母でもなく、妹でもなく。

父親であるマサオさんなのだと、分かっていた。


トマコの話を全部聞いた後、それまで黙っていたマサオさんが口を開いた。

「オレも悪かった。」

と。

思いもがけぬその言葉にトマコは驚いた。

マサオは続けた。

「最近トマコが大変そうにしていたのに、全然手伝わなかった。

 それに、オレ自身もなぁ太を叱ってばかりだった。

 お前だけが悪いんじゃないよ。

 オレも悪かったんだ。

 してしまったことはしょうがない。

 終わったことなんだから。

 これからどうするか、二人で考えていこう。

 道を間違えたなら、正せばいいんだから。」


胸にあった黒くて重い塊が、スーと溶けていった気がしました。


その後はひとしきり泣いて。

でも。

泣くのはすぐおしまい。

一番つらかったのは誰でもない、なぁ太自身だから。


それからは二人で話し合い。

拙い二人ながらに決めたこと。


・とりあえずいっぱい抱きしめる。

・明日は普通の生活をしつつも、なぁ太と目一杯遊ぶ。

・明日一日、怒ることを一切辞めてみる。

・命に関わるような危険なコトだけは叱る。


そして、様子を見つつ改善していこうということになった。


次の日。


いつもの一日が始まった。

違うのは、トマコとマサオが怒らないということだけ。

やっぱりなぁ太はトマコに頼ってばかりだったけど。

イタズラしたり歯磨きを嫌がったりもしたけれど。

怒らない一日を終えて気づいたこと。


怒っても怒らなくても、なぁ太の生活スピードは変わらない


つまり。

トマコがイライラして

「早くして!」

といったところで、二歳児の行動が早くなることは決してなく。

むしろ、怒らないと機嫌が悪くなることもムキになることもないため、物事がスムーズに進んでいく。

これに気づいた時、本当に目からウロコが落ちるかと思った。

トマコ一人でイライラして一人で状況を悪化させてたんだなぁって。


それから毎日、なるべく怒らないように頑張った。

怒らないトマコに。

どこがギクシャクした日が続いた。

やっぱり腹が立つこともたくさんあった。

その度、怒る前に、手を出す前に、なぁ太をギュッと抱きしめてみた。

自分に対して心の中で

「静まれ~!静まれ~!」

と念じながら。

なぁ太には

「そうだよねー。

 なぁ太もコン吉みたいに服着させて欲しいんだよね。」

と同調しながら。

もしくは、笑ってみた。

とりあえず笑ってみた。

「もー、甘えんぼさん♪」

なんて言いながら、笑ってみた。

バカみたいに笑ってみた。


いい妻、いい嫁、いい母のうち。

いい妻、いい嫁をやめてみた。

いい母であることだけに専念した。

部屋は荒れていったけど。

義実家に対しても何もしなくなったけど。

自分の家族の関係を修復することにだけ専念した。

そして、毎日の様子をマサオさんに報告し、お互い気をつけるように心がけた。


しばらくすると。

怒らないトマコが普通になった。

お行儀が悪いと注意するし、命に関わることだけは本気で叱るけど。

そんな安定したトマコと同じく。

あんなに手がかかったなぁ太も、すごく落ち着いた。

子供って本当に敏感に母親の状態を察知するんだなぁ…と驚いた。



トマコが荒れたあの二週間。

毎日、目一杯の作り笑いを浮かべて

「ママ、好きよ」

って抱きついてきていたなぁ太。

あの頃は分からなかったけど、今なら分かる。

きっとママに笑って欲しかったんだろうな。

抱きしめて欲しかったんだろうな。

そして何より。

ママに

「愛されてる」

って実感したかったんだろうな。


でも。

以前たった二週間で悪化したトマコが。

以前の自分を取り戻すのに、二ヶ月かかった。

完全に何かから抜け出せた…と感じたのは、実はつい最近の話。

何かのキッカケでまた簡単に戻ってしまうかもしれない。

でも、その恐怖心もすごく大事なのだと今は思う。

あの二週間。

なぁ太がすごく大きなお兄ちゃんに見えてたけど。

今、ふとなぁ太を見た時に、すごく小さな男の子に見えた時。

トマコは安堵する。

身近にある『虐待』

それを犯さない為にも、自分で危機感を持っておこう…と今は強く思う。

たくさんのコメント、本当にありがとうございました。

自分自身の辛い経験を書かれた方も。

温かい励ましを下さった方も。

本当に本当にありがとう。

正直、同じ思いをしてる人たちがこんなにたくさん…と、トマコ自身もホッとしました。

今回この話を載せようと思ったのは。

ブログではいい母親、楽しい家族…みたいなことを書き、実際裏でこんなことをしている自分がイヤでしょうがなかった。

楽しい記事を書けば書くほど、自分に対して反吐が出るほど嫌悪感を募らせていってた。

今回事実を書くことで、ブログも荒れるだろうなぁと。

批難中傷のコメントがたくさん来るだろうなぁと。

それでも書こうと思ったのは、他でもない自分の為。

自分を取り戻す為に、必要だと感じたから。

酷い母親だとお叱りを受けてもいい…と思って書いたこの記事だったのに。

まさかこんなに同調、励まし頂けるとは夢にも思っていませんでした。

本当にありがとう。

不覚にもPC前で泣いてしまったトマコです…。


今現在育児に悩んでおられる方も。

いつかトンネルから抜け出せる日が訪れますように…。



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